第50章

樋口浅子は客間に戻り、テーブルの上からフルーツナイフを手に取ると、再び玄関へと向かった。

「樋口さん、何をするつもりですか?暴走しないでください、早くナイフを置いてください!」

メイドは樋口浅子の手にあるナイフを見て、顔色が変わり、慌てて後ずさりした。自分を傷つけるのではないかと恐れたのだ。

樋口浅子は彼女を無視した。

フルーツナイフを手に持ち、玄関まで歩くと、冷たい目でボディガードたちを見つめた。

「どけるの?どけないの?」

数人のボディガードは彼女の手にあるフルーツナイフを一瞥したが、誰一人として退く気配はなかった。

「相澤様の命令なしでは、私たちはどけません。たとえ樋口さ...

ログインして続きを読む